デザインの現場から。と言いつつほぼデジカメの噺。
by MASANOBU HIZAWA(アートディレクター/グラフィックデザイナー)
http://www.neelmartin.com/
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TOKYO DESIGNERS WEEK 2008
夕方、神宮外苑、TOKYO DESIGNERS WEEKへ。
昨年はうっかり会場内で写真撮ろうとして警備員サンに叱られるとこでしたので、今年は外側から1枚。



「100% DESIGN TOKYO」は相変わらず洗練されたデザイン見本市に仕上がってましたが、「BLICK FANG 08」みたいな、若干肩の力の抜けた、蚤の市っぽい展示も好きですね僕は。会場内ではいくつか懐かしい顔にもバッタリと。
普段であればこの絵画館前の広場のあたりに来ると、僕の場合外苑のバッティングセンターとかその先の神宮球場とか野球モードのスイッチが入るんですが、本日ばかりはデザインモード。
ひととおり見終えて表に出ると、空はもう真っ暗でかなり寒い。今日で10月も終わりです。
二通の封書
月末から開催されるTOKYO DESIGNERS WEEKの招待状が届きました。毎年ありがとうございます。継続はチカラなりとはよく言ったもので、年々面白くなってますもんね。今年も楽しみ。TDWのスタッフの何人かとは仕事上での接点もあって親しいのですが、この時期は準備で大変なんだろうなあ。生きていてくださいね。



もうひとつ封書が届いてた。東京都総務局統計部商工統計課という名称を読んでるだけで頭痛のしそうな所から「特定サービス産業実体調査」なるものの記入依頼。ん?、と思い机の上の郵便物を調べると、ちょっと前にも同じ封書が届いてる。中を見るとまったく同じ書類。二重に送ってしまってるようで、この時点でため息がでる。最近のマスコミみたいになんでもかんでも税金の無駄使いだとか言うのもどうかとは思うんですが、同じ宛先に二度同じ書類を送ってどうしますの。書類のほうも、1.まず都知事名義の「調査について」という挨拶の紙があって、2.経産省名義の「調査について」というフォーマットの違う挨拶の紙があって、3.東京都総務局名義の「調査票提出について」というまたフォーマットの違う紙があって、4.経産省のマークの入った「サービス産業実態調査のご協力をお願いします」という8ページの冊子があって、5.それとまたフォーマットの違う「デザイン業・機械設計業調査票記入注意」という16ページの冊子があり、6.「調査票の記載例」があってやっと、7.記入すべき調査票がある、と。
どうしてこうなるの、って感じ。デザインが足りないですよね。なんて言うと役所の方はハイわかりましたと言って書類に花柄でも入れてデザインしてみましたあとか言い出しそうですが、そうでなくてもっと根っこの、情報を整理して相手に伝えたい内容が伝わるよう工夫する、というデザインのマインドの部分です。所管の経産省と調査を実施する各都道府県との縦割りによって別アイテムが必要になるのは百歩譲って寛大にも認めるにしたって(民間ならそれも認められないけどね)、上記アイテムの2と4はどう考えてもひとつにまとめられる。4の冊子のイントロ部分に2の挨拶文を入れればいいだけの話しです。そうすると調査についての説明を経産省と都と両方でする必要はないわけで重複する3は不要になる。書類送付の大きな封筒は都のものなんだから、東京都のメッセージは(必要なのであれば)封筒に刷るスペースがある。調査対象業種ごとに記入注意事項は異なるのだろうから5が別冊になってるのはわかるけど、せめて4の本体と同じフォーマットにしておけば4と対をなす付録であることが直感的にわかるでしょう。6と7も一枚の見開きにしてくれたほうが参照しながらの記入が容易になる。
これだけのことで「いかなる趣旨の内容物を送ったかについてのメッセージ入りの封筒」を開くと、A.「調査協力へのお願いが表紙に記された調査概要の冊子」と、B.「Aと同じフォーマットの、業種別の記入方法付録冊子」があって、C.「記入例が横に記された記入票」がある、という、シンプルで使いやすく…なによりコストダウンされたものになると思うんですけどね。
スウェーデンとかだと、こういったパブリックの書類が見事にデザインされています。スウェーデン語を読めない僕にすらそれが何の書類なのかが(ああ、これは年金支給額見込みについての年毎のレポートだな、と)なんとなくわかったほどに。
要するに受け手の側の身になって考えてみる、ということなんでしょうね、
TDWから美しい封書と、経産省からの困った封書。ま、見比べちゃいけないんでしょうけどどうしても……。ホント頼みますよ役所の皆さん、調査にはちゃんと協力しますから。
コート紙やめました。
先日のA3ワイドのコート紙ですが……駄目ですね、LP-8800CPSにやたら詰まる。コート紙は表面が滑るし少し厚みもあるのでローラーにうまく絡んでくれないみたいです。メーカーサイトで見ても間違いなく純正用紙で適合機種なんだけどなー。もともとある程度の紙詰まりが起こるのはこっちも折り込み済みなんですが、ちょっと頻度が多過ぎ。



どんなプリンタでもそうですが、コンピュータ側でデータをスプールし終えた後のプリンタの動作音には一定のリズム感みたいのがあって、LP-8800の場合、

“ウィーン、ウイウイウイ、ウィーーーーーーーン”

という感じで「ウォームアップして」「紙をローディングして」「印刷」という流れなんですが、コート紙を使うと5回に1度くらいの頻度で

“ウィーン、ウイウイウイ、ウィ?”

という感じで止まってしまってエラーの赤ランプがつく。しょうがないなと詰まった紙を取り出すんだけれど、そのうち「詰まりぐせ」がついてきて、

“ウィーン、ウイ?”

くらいの段階で詰まったり、最終的にはいきなり

“ウィ?”

とかで詰まってしまって早ぇなおいとツッ込むありさま。
先日の学校案内のプレゼン前夜の出力の時に派手に詰まって、あぶなくプレゼンに支障が出そうになった時点でもうコート紙使うのやめようと思ってたんだけど、10日ほど経ったしひょっとしたら詰まりぐせも直ってるのではなかろうかと(なんで?)思ってさっきちょっと用も無く1枚試してみたら、

“ウィ?”

ウィじゃないってんですよ。
やっぱり駄目か。うちのLP-8800個体との相性なんですかね。無理してプリンタのほうを壊したら元も子もないので、やっぱりやめます。
そうなると使い残しのこの紙どうしましょうか。

もし、型番LPCCTA3W、エプソン純正カラーレーザープリンタ用コート紙A3Wを普段問題なく使ってる、という方いましたら差し上げますのでLinksにあるホームページのcontactかコメントでご連絡ください。そこそこの値段するもんですし、まだ750枚残ってるんで捨てるにゃ勿体ないし、ミスコピーの紙とかをメモ帳なんかに再生してる方もいるんでしょうけどこれでメモ帳作ったらどんだけメモるねん、という量になりそうだし。
どなたもご入り用でなければ、タイガースがクライマックスシリーズ1stステージ突破できなかった悔しさに1枚1枚号泣しながらひっちゃぶいて750枚分の紙吹雪に豪勢に埋もれてみようかと思っています。
ヴィジョンズ・オブ・アメリカ


日曜。恵比寿駅で電車を降り……しかしどーしてもそのままオフィスに仕事しに向かう気持ちになれず、登校拒否の中学生みたいにオフィスとは方向の違うガーデンプレイス側に歩き、東京都写真美術館で「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」展をさらっと見る。「プロフェッショナルの所作」に触れて、心を落ち着かせる必要があったのです。
写真展、ではあるんですが、メディア、広告といった文化の歴史の中で写真やカメラマンが果たしてきた役割みたいなものが見て取れるように工夫された展覧会でしたね。アレクセイ・ブロドヴィッチという(不勉強なことに知らないお名前だったんですが)人がアートディレクターをつとめた「ハーパース・バザー」誌の1930年代の原本も置いてあったんですがもう無茶苦茶カッコいい。もうそのまんまパク…参考にさせていただけちゃったりできそうな、白地を活かしたレイアウトの妙。トリミングの妙。さっきネットで調べてみたら凄いお人なのねやっぱり。
大勢の人間が係ったであろうこれだけの仕事、サラッと才能だけで出来たわけではないんだろうなあブロドヴィッチさんもやっぱり。彼もやはり時には「七転八倒」したのだろうかと考えてみる。今更ですがプロフェッショナルっていいですね。自分も、プロフェッショナルでありたいと思います。
新潟にて祝う
いつもお世話になってるT社のKさんとIちゃんの結婚式。Iちゃんのご実家とT社本社のある新潟で行われました。初めての新潟なんだしせっかくだからと昨日の午後のうちに新幹線に飛び乗って、前乗り。日暮れ前に着き、朱鷺メッセという街で一番高い展望室のあるビルまでバスで行き、市の中心部まで信濃川沿いを散歩しながら戻ってみました。






なかなかに味わい深い景観多し。GX100を持って行ってよかった。



夕食に名物のへぎそばを食す。美味。米どころなんだから日本酒も頼むべきだったか。
東京を発つ前にYahoo!で予約したホテル(もちろんそこはアタクシのことですので「安い順」にソートして…)に宿泊。朝食は1階の牛丼店「すき屋」で食べれますとのことだったのだけど、別にサービス券的なものをくれるわけでもなく、単にチェックアウトの後にそちらで普通に食べて下さいということで、だったら別にどこで何食べてもいいのではなかろうかと若干意味がよくわからなかったのだけどまあせっかくそう言うんだからとすき屋で朝定食を食べる。白米が凄く美味しかったんですが、やっぱ新潟だから?

式までだいぶ時間があったので古町界隈をぶらぶらしてたら、広い敷地の、由緒正しそうな料亭っぽいフォトジェニックな建物を発見し写真に撮る。



ぼちぼち会場へ、と思って一度大通りまで戻り、招待状の地図を取り出して歩く。なんだか今来た道を戻ってる。……さっきの素敵な料亭が会場でした。



KさんIちゃんお招き頂いてありがとうございまいた。本当におめでとうごさいます、お幸せに。これからも宜しく。

上越新幹線、というやつに初めて乗れたし、新潟に初めて行けたし、めでたいし、お陰さまで連休を満喫できました。「すき家で朝食」だけが、いまもっていささか謎です。
阪神とか後輩とか、GX200とか。
金曜までで仕事のヤマ場乗り切り、ほっと一息の巻き。しばらくは、少しまったりと行けるでしょうか。その間に我がタイガースがありえない事をやらかしよった。いやもう我々くらい年季の入ったファンになるとね、これでこそ阪神、という、なんと言うかある種の「おさまりの良さ」に対する安堵感とでも申しましょうか「物事は然るべく、なるべきようになるのだ」という達観した感慨もあるんですね。いやマジで僕らの世代で中学生高校生とかの多感な時期を阪神ファンで生きてきた者は、「開幕11試合目にして今期2度目の5連敗!」みたいな、どうやったらそんな事が数字的に可能なのだと思えるほどの弱さが当たり前の中で毎日学校に行き巨人ファンと普通にコミュニケーションをとっていたわけで、平静に生きるために少なからず精神構造に歪みを抱えることになったと思うのですよ。と同時に、果てしないまでの辛抱強さと無償の愛、はけ口のないやるせなさを吸収する術をもまた、身につけることになる。最近の「キレる若者」のニュースなど見るたびに「お前なあ…(そんな事でキレてたら阪神ファン無理でしょ)」というわけのわからない対照をしたりするようになるのです。ということで、'85年の「どう喜んだらいいのか方法を知らなかった」というあの青春の戸惑いを懐かしく思い出す僕でした。
甘酸っぱい心地よさを感じつつタイガースの話しはここまで。

木曜の深夜というか金曜の早朝、今回の仕事を手伝ってもらった渋谷のデザイン事務所に行ったら、そこのメンバーに大学の後輩が二人いました。同じデザイン科、ゼミまで一緒でした。僕らが卒業した数年後から急に就職がキビシい時代になってしまったので、こうしてバリバリやってる後輩に出会うと嬉しい。……しかし午前4時とかに普通に仕事してる先輩後輩。A教授、今後授業では「夜は早くお家に帰りましょう」という指導もなさるほうがいいのではないかと。

金曜の夕方にはお世話になってるプロデューサー氏がオフィスに来る。GX200を買ったとのことで見せてもらい、自分のGX100で撮ってみました。



およそ考えうるオプション、全部付けてる。カッコいい。この際、是非ワイコンも買って見せてください。あとiMacも買って、Photoshopも買って、iPhotoで楽しんだらBook機能も…って、最終的には一眼買うより高くついたりして。とりあえずどこか旅先(もちろん海外ですよね)でのスナップを楽しみにしています! ひひひひ。

ということでRicohさま、また僕の勧めでユーザーが増えました。秋の味覚の美味しい季節ですね、松茸とか、葡萄とか。(←しつこいって^ ^;)
この秋、シーズンVIを。
昨日のブログの、「先週末からジャックバウアー・モードに突入。」という記述を読んで、僕が「先日からフジテレビで深夜に放映している『24 シーズンVI』を欠かさずに観ている」という意味に受け取った方がいらしたようです……。



バウアー捜査官のごとく24時間お仕事を……、ということを言いたかった……。
そう言えば一時期あれほどハマった24も(もうTSUTAYAでレンタル始まるなりすぐ借りてたもんでした)、シーズン6はまだ観てないんですよね(シーズン5まで観てんなら充分じゃねえかとの説も)。今週末ぐらいからはだいぶゆとりができるはずだし、秋の夜長にシーズン6でも楽しもうかしら。
……ブログの更新時刻が深夜から早朝へと着実に推移してますね(笑)。一周まわって普通の時刻になってきてしまった。
いずれにしましても、今の仕事も明日くらいで一息です。頑張りまっしょい。
期間限定コート紙キャンペーン
先週末からジャックバウアー・モードに突入。
もう少しです、頑張りましょう。
我が社のカラーレーザープリンタはEPSONのLP-8800CPS。PS対応のA3W仕様です。導入して何年か経ちますがほんとにまあよく働いてくれてます。出力のクオリティそのもので言う限り、ここ数年でインクジェットプリンタの画質が飛躍的に良くなってるので一発モノのプレゼンなんかではまだたまにカラリオを使うこともありますが、ページものとか、あるいは一枚モノであってもプレゼン用に枚数出さなくちゃならないなんて時もありますので、今となってはもうレーザー無しの環境は考えられない。と言うかレーザーなかった時代オレどうやって仕事してたんだろうと思います。いや、レーザー導入した途端にそれが必要となるような仕事が入ってきた気もするので、投資がちゃんと仕事を呼んでくれたという見方もできるのかな。かつては10枚だろうと20枚だろうと地道にインクジェットで出してたんだよね。そう言えばカラリオの用紙ガイドに紙50枚くらいセットして、新品のインク入れて、プリント実行かけて帰宅した、なんてこともあったなあ。で翌朝来てみたら、いきなり1枚目で紙づまり起こしててその日必要な出力が1枚もできてなくてそのままどこか遠くの町に旅立とうかと思ったこともありましたな。

で、うちのカラーレーザープリンタの出力が、先日からA3ノビに限り異様にキレイになるという不思議な現象が。
初めてその出力を目にした時は、なんじゃあこりゃあ、とかなりビビり、プリンタ側に何かここに来て心境の変化があったのだろうかと(なワケない)勘ぐったのですが、よく見ると用紙のほうが妙にツルピカしてるのが原因でした。



純正の普通紙頼んだつもりが、コート紙が届いてた。やっちまったな大●商会と思ってWebの発注履歴を見たら、僕が間違いなくコートを発注してました…。はは、なんだか今回値段いつもよか高いなーと思っていたのさ。
ま、でもさすがに高いだけあって、綺麗なんですよ確かに。出力したラフにもそこはかとなく高級感が。せっかくなので今回届いた1000枚、このまま使い切ろうかなと思ってます。
A3、またはA4見開きサイズの案件がございましたら、ぜひニールマーチンデザインオフィスへご依頼ください。今ならもれなく高級コート紙にてカンプ出力いたします。たとえ本番の印刷にマット紙を想定していようとヴァンヌーボーを想定していようと構うこと無くコート紙にてカンプ出力いたしてしまいます。無くなり次第通常の普通紙に戻しますので、この機会に是非!
Easy To Remember
何年ぶりになるのかさえ正確には思い出せない。昨日の夜、もの凄く久々――たぶん6〜7年ぶり――に訪ねた南青山の小さなライブハウス「B」で、JAZZに浸る。毎月律儀に出演予定表付きのDMを送ってもらっているのに足が遠のいていたことを蝶タイのウエイターさんに詫びてからお酒を注文し、一番奥の、僕が好きなボックス席に友人と陣取る。ヴォーカルのMさん、CDでその声だけ聞かせると彼女が日本人とはまず誰も信じない。いやもうハスキーでシブいのですよ。



25歳の時、デザイン会社の先輩からクルマ(伝説のホンダ・シティ・カブリオレ。断っておきますけどあのピンク色はあくまで純正色ですから!)譲ってもらった春の週末、嬉しくてわーいわーいと無目的にドライブしていて、気付いたら房総半島の先のほうまで行ってしまいそこで夜中になり、急に通りゃんせみたいな心境になって(馬鹿だね)最寄りのコンビニで「るるぶ千葉」を立ち読みして近くの宿泊施設を調べ電話番号を暗記(買え!)。携帯がまだ普及してない時代の事です、公衆電話から電話かけて、あのすいません今から泊めてもらえますかと訪れたのが、千倉町のBというペンション。マスターは大のジャズ好きでIBM勤務の後脱サラし、何百枚ものレコードとオーディオ機器と共に千倉にペンションを開いたのだとの事。リビングはミニコンサートくらいならできそうな広さで、夜中に急に来たにも関わらずマスターはお酒作ってくれて自慢のレコードも聞かせてくれました。ちなみにマスター、翌朝一緒に朝食しながら「あんな夜中に1人で急に来たから、なんか死に場所求めてさまよってるアブナい奴じゃないかと思って夜中ずっとビビってたよ」。誰が死に場所求めてさまよってるアブナい奴じゃ。
その夏マスターから電話があり、今度ペンションにミュージシャン招いてコンサートやるからお前も来なさいというコトになり、シティで駆け付けたそのコンサートで歌っていたのがMさんだったと(はあ長い話し)。
以来Mさん、アサヒ黒生のCMソング歌ったりニューヨークで活動してた時期もあったのかな、なにせご活躍で、僕は吉祥寺のサムタイムや高円寺のジロキチ、そして青山のB(ここだけは店名は内緒。いひひ。ブルーノートじゃないよ参考までに)といった店を時折(と言っても年に数度、だったのがやがて数年に一度、というペースに…)訪ねては、変わらぬハスキーな声とピアノ、ベース、ドラムのトリオによる演奏を楽しんでいました。その間に僕は、デザイン会社を辞め、仲間と共同の事務所を始め、やがて独立し、と変化の激しい期間だったのだけど、お店と、置いてあるスコッチと、歌声はまったく変わることがなく、きっと僕にはそれが嬉しかったんだと思う。
6〜7年前最後に訪ねた時、ちょっと失敗した。取引先のお客さん数名と飲みましょうかという話しになり、僕は、いい店知ってるんですよとBに案内したんですね。お客さんは、店での過ごし方をまったく知らず――ジャズを、という意味ではなくそこでの時間の過ごし方を――、要するに歌も聞かずにくっ喋っとったワケです。悪い人でも非常識な人でもないのだけど、粋を理解してなかったんですね。その方がダサいのじゃなく、その人を連れて行った僕がダサいのです。大切な場所を接待に使おうとしていたワケです。しまったー、と思いましたね。別にお店に叱られたりしたわけじゃなかったんですが、その後最長記録に足が遠のいてしまっていたのはその時の申し訳なさもあったのかも。

Mさんが「Easy To Remember」を歌っている。目を閉じるとニューヨークを思い出す……行ったことないですけど。
店の内装も壁に掛けられた写真も変わっておらず、野菜スティックの切り方も一緒。昨夜久しぶりのBで、でも僕は、乾いたスポンジをじゅわっと水に浸したように、すぐに「昔からの感じ」に。まさしくEasy To Remember。なんだかいろんな事をいっぺんに思い出し過ぎて頭のHD容量が足らない感じ。あんまり間を空けるもんじゃありませんね。
以前は僕を見つけるとインターバルにグラス持って席まで挨拶に来てくれていたMさん、昨夜は来ず。そりゃ6年も7年も経ってるんだから客の一人なんて忘れるよな、悲しいけど仕方がないよと思ってたら、帰りがけに控え席の近くを通ったら「あらー久しぶり」と握手してくる。単に最近視力が落ちて奥の席にいた僕の顔が見えなかったんだそうで。それはそれで別の意味で悲しい…(涙)。でも忘れてるわけないよな、きっと覚えているはずだ、とも、実は内心、思っていたのでした。
It's easy to remember, but so hard to forget.... 思い出すのは簡単だけど、忘れるなんてできやしない。